火星物語という作品を知っていますか? これは、1995年4月から11月にかけて、「広井王子のマルチ天国」内で放送されたラジオドラマ、火星物語2のあらすじをテキスト化したものです。 ラジオドラマ火星物語2は、CDでも発売されています。 しかし、時間的な制約から、削られた部分や取り直しも多々ありました。 これは、ラジオ本編を中心にまとめてあります。 火星物語が始められた初期の、最も人気の高いとされる火星物語ロマンシア2。 ごゆるりと御楽しみください。 ・・・・って言っても、僕が書いたんじゃないって。 !#1  ここでは、ロマンシア2の主人公であるクエス、そしてサスケの位置づけがなされている。クエスは、とある王国の姫であり、また自由奔放に生きる風使いにあこがれを抱く少女でもある。姫、といっても城での格式的なきまりを窮屈なものとしかとらえていない、とても行動的な性格をもっている、ま、云ってしまえば男勝りな少女である。  なお、ここでクエスは14才と云うことになっているが、後に12才に変更される。  また、この時点では”クエス”という名前はついていなく、リスナーに決めてもらうという、ロマンシア1と同じ手法がとられた。 出演 ナレーション:広井王子 姫(クエス):横山智佐 サスケ、国王:千葉繁 !#2  王座を狙う大臣は、国の一切を魔族にまかせることで魔族と契約を結んだ。その魔族の呪いは国王の命を奪う。国王が亡くなったいま、王冠の儀式により次の王が選ばれる。  −−−王冠の儀式。それは神が王を任命する儀式。だが、それは形式的なもので、実質的には王の血族からしか選ばれていない。−−−  しかし、クエスが邪魔な大臣は王冠の儀式を操作した。結果、クエスは「国のことを思わないばかりか、国を危機におとしいれる者」として国外追放されてしまう。このことで王を継ぐ気のなかったクエスは、神が自分の心を知っていたものと思う。  クエスは、希望通り自由を得ることになった。 出演 ナレーション:広井王子 姫(クエス)、ばあや:横山智佐 サスケ、大臣:千葉繁 魔族:山口勝平 !#3  自由を得たクエスは、サスケと旅に出た。風使いになるために。また、サスケはクエスの行動に立ち入ることは出来なかった。彼に許されたことは「クエスを守る」事のみである。そう、風の長老に言付けられていた。  旅の途中”夜の森”の中、一行は”さまよえる宿屋”を発見する。何も知らない二人はそこで一泊することに。その夜、宿屋の主人の仕向けた猛獣の鋭い爪が襲いかかる!! 出演 ナレーション:広井王子 姫(クエス):横山智佐 サスケ、主人:千葉繁 !#3(番組側のミスで本当は#4。以降すべてずれる。)  猛獣を前に、緊張した時間が流れる。  「ここは旅人に本当の安らぎを与える宿屋、死こそ命の救済である。さあ、その魂を我がコレクションに!!」  宿屋の主人のその言葉に、サスケは怒りの風を解放する。怒りの色を持った真っ赤な風は、一気に宿屋も猛獣もすべてを吹き飛ばした。その光景に、クエスは恐怖を覚える。  「風は、すべてが優しい風じゃないんだ。」  サスケはクエスにそう語った。  「風使いは、荒々しい風も使うのだ。」と。  森を抜ければ、風の民が住む”風の渓谷”がある。クエスはサスケの後を、足早についていった。 出演 ナレーション:広井王子 姫(クエス):横山智佐 サスケ、主人:千葉繁 !#4  風の渓谷にやってきた(黒いパンツの)クエスはその美しさに息を飲む。サスケに先導され、ルビーで出来た真っ赤な”ウィンズ・ゲート”をくぐる(黒いパンツの)クエス。  「ゲートが生きているようだ。」  そう思う(黒いパンツの)クエスの心にゲートの心が触れると、(黒いパンツの)クエスはゲートの下で眠ってしまう。  「これで風使いになれたわけじゃない。姫様は、風の渓谷に入る事を許されたんだ。これから、風使いになるための儀式がある。なに、簡単なもんさ。」  そういうサスケだが、儀式は簡単なものではなかった。心の奥にある、すべてを引きずり出す儀式だからだ。はたして、(黒いパンツの)クエスは風使いになれるのか。 出演 ナレーション:広井王子 (黒いパンツの)姫(クエス):横山智佐 サスケ:千葉繁 ウィンズ・ゲート:伊藤美紀 !#5  早く風使いになりたいクエス。風の渓谷の中で、クエスは黒い不思議な影を発見する。サスケはそれが”風の長”そして”風の意志”であることをクエスに告げる。と、そのとき!黒い風の意志がクエスを取り込む!これからクエスはどうなってしまうのか・・・。 (この回は多忙な広井先生がついに息切れ、シナリオがたった5行という火星物語史上最短話であった。そのため、ほとんどが千葉繁氏と横山智佐さんのアドリブであった。またこの回はCDに完全に収録されている。「わ〜い!早く風の儀式をしてして」から「風の意志に飲み込まれた・・。ごっくん。」まで。) 出演 ナレーション:広井王子 姫(クエス):横山智佐 サスケ:千葉繁 !#6  風の儀式、それは風の意志の中でクエスの風使いとしての資質を試される儀式。その意志の中でクエスは生きる物たちの命の儚さ、強さを知る。  「命は、巡るのだ・・・。」  クエスは自分の中に風を感じた。そう、彼女は望み通り風使いになったのだ。だが、その代償として、今までとは全く別の世界、全く別の時空に飛ばされてしまう。  もうろうとした意識の中、サスケがクエスの名を呼ぶ。意識を取り戻したクエスは、周りの光景に驚愕する。  「どうしちまったんだよ、クエス!?頭でもうっちまったのか?」  自分に混乱するクエスに、サスケの声がリアリティーを帯びて降り注ぐ。  目の前に広がる戦場と云う名の荒野。  「戦争、なのか・・・?」  「そうだ、敵は火と大地の神を奉る、アショカ法王国。俺達風使いの敵。俺達の村が、奴らに消されたのを忘れちまったのか!?」  「アショカ、法王国・・・」  サスケの声以外にリアリティーの無いクエスは、目の前の光景を受け入れるのに、時間がかかっていた。  「ちぃ、ここも囲まれちまったか・・・。」  移動するにも風の結界が張り巡らせてあるため、風を使えない二人。これから彼女らはどうなるのか・・・?  今、運命の輪が、音をたてて回り始めた・・・。 (この回で、姫の名前がクエスと決定された。ちなみに、風を意味する”ウィンド”にからめた名前が大量にあったらしい。かくいう自分も”ウェンディーナ”という名前を考えてしまっていた。月並みだな。) 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ:千葉繁 !#7  戦場を逃げまどう二人。と、そのとき敵が目の前に現れる!  「風雷剣っ!!」  サスケの剣が稲光とともに、敵を凪払う。クエスはそれを直視し、震えた。  「サスケ・・・殺したのか・・・!?」  サスケは答える。  「いいか!これは戦争なんだ!殺さなければ、こっちがやられっちまう!ここじゃ、やさしさなんてものは罪悪なんだ!」  その言葉に衝撃を受けるクエス。  「でも、僕はだれも傷つけたくない・・・!」  瞬間、時をみはからったかのように、地中から新手があらわれる!その数3人。しかし、クエスは腰の剣に手をかけたまま動けない。瞬時に敵2人を斬り飛ばすサスケ。だが、3人目の刃がサスケの肩口を襲う。ほとばしる鮮血を目の当たりにしたクエスは、心の中で何かがはじけるのを感じた。次の瞬間にはすでに、クエスが3人目の敵を斬り飛ばしていた。すぐにサスケの傷の止血をするクエス。  「へへへ・・さすがは疾風のクエス。剣の動きがが見えなかったぜ・・・。」  「だまっていろ・・・。いま傷口を縛る。」  「クエス、西に逃げよう。あそこはまだアショカの力が弱いはずだ・・・。」  もう太陽は沈みかけている。西へ撤退する二人に、闇が重くのしかかってくるようだった。あたりの空気は、重く淀んでいた・・・。 出演 ナレーション、敵:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、敵:千葉繁 !#8  西へ逃げる二人、クエスはサスケの背中を見つめながら走った。前の敵との戦いのことで、自分を責めるクエス。  「自分を責めるな、クエス。誰にも失敗はある。それを、次に結び付ければいいのさ。」  サスケは云う。と、サスケが立ち止まる。前方のしげみに人が倒れていた。殺気はない。気付けの酒を口にあてがわせるサスケ。目を覚ましたその人物は”地形学者のシェラ”と名乗った。  −−−地形学者。火星の地形を研究し、その成り立ちを研究する者。−−−  彼の要望で、ともに行動をすることになる二人。一行は新しい仲間を加え、さらに西へ向かった。夜、一行は岩に囲まれた窪地で一晩を過ごすことにする。冷える火星の夜。サスケとクエスは、寄り添うように眠りについた・・・。クエスは嫌がっているようだが・・・。 出演 ナレーション:広井王子 クエス、シェラ:横山智佐 サスケ:千葉繁 (CDを聞いた方ならわかると思うが、ここは取り直しが入っている。CDではシェラの声を、広井王子氏があてている。) !#9  西の辺境、シェスタ。クエス達が向かう場所。しかし、シェラの話によると、シェスタの風使いは滅び、今は危険な機械の国になっているという。その話が信じられないサスケ。そのとき、上空を機械の兵隊が轟音とともに飛び去った。  「あれは・・・シェスタの風機竜王団・・・!」  驚愕の表情でシェラが云う。  「クエス、シェスタにいくぞ!俺には、シェスタの風の軍団が滅びたなんて・・思えない!」  サスケが興奮して云う。  かくして、シェスタに向かう一行。しかし、一度行った場所には行くことのできないシェラは、マントに飾られた赤い宝石を引きちぎると、それをクエスに渡し、二人の元を去った。 出演 ナレーション:広井王子 クエス、シェラ:横山智佐 サスケ:千葉繁 !#10  何故、戦争が起きているのか。理由も無く戦い続けるその中で、クエスにとってその戦争はまるで物語の一編のように思え、空気を希薄に感じていた。  丸半日走り続け、ようやくアショカの結界を突破した二人。風を用いてシェスタまで飛ぼうとするクエスを、サスケは止める。飛行距離が長いと、結界に捕まり易くなるからだ。  サスケの案で無法街として名高いクスクスへ向かおうとする二人の前に、殺気を帯びた男が現れる。  「さすがは、サスケさんだ・・・。気配を消してもお見通しとは。私は、賞金稼ぎ、南京玉簾のギンジ。あなたの首には賞金がかかっているのでね。」  玉簾を巧妙に操るギンジ。サスケは一歩も動けずにその攻撃を浴びてしまう。それは、ものすごい早業だった。  サスケはギンジを倒せるのか・・・。 出演 ナレーション、ギンジ:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ:千葉繁 (この回で、ロマンシア2が始まってから初めて、広井王子氏がきちんとした役を務めた。以降、広井氏に声をあててもらいたい、といったリスナーの葉書が増えたような気がする。渋いっす、広井さん。) !#11  変幻自在の玉簾は、しなやかな鞭に変化し、容赦無くサスケをおそう。その痛みが、サスケには徐々に快楽へと変化していくようだった。その様子を見たギンジは攻撃の手を止めた。  「ばかばかしい。こんな奴があのサスケの筈がない。やめだやめだ。あばよ、命を大切にな・・・。」  そう、サスケは変態のフリをして敵を欺いたのだ。危機を脱したサスケは、風を呼ぼうと精神を集中させる。それを遮るクエス。  「待って!僕がやってみる!」  クエスが精神を集中させると、見事に風を操る。その風に乗り、一番近い街、クスクスへと移動したつもりの二人だったが、どうも様子が違う。とそこに、不思議な金髪の少女が現れる。ティナと名乗るその少女は、ここが”地図にない街、パンドーラ”であることを告げる。どうやら、クエスは風を操るのに失敗したらしい・・・。 出演 ナレーション、ギンジ:広井王子 クエス、ティナ:横山智佐 サスケ:千葉繁 !#12  風を操るのに失敗し、わけのわからない街に来てしまった二人。おまけにティナという金髪のおませな少女に、クエスは一目簿れされてしまう。  「ティナってば、クエスとお茶した〜い!!」  しぶしぶティナについてゆくクエスとサスケ。クエスはそこで、この街になにかいやな雰囲気を感じ始めていた。ティナに先導され怪しい店に入ると、更に怪しく異様にテンションの高いじいさんがステージに立っていた。  「あれはね、ロキっていう科学者なの。私たちのお父さんみたいな人ね。」  おもわせぶりなティナの台詞に違和感を覚えるクエス。その直後、緑色の瞳をした少年に腕を掴まれたサスケが入ってきた。  「ウェンダ!人間に危害を加えてはいかん!その手をはなすんじゃ!!」  ロキは、テンションの衰えもなく云う。 「これはすまない!この子達はみんな私の創ったロボット達なんじゃ!まだ人間回路がうまく作動しなくてな!!本物の人間はわし一人なんじゃ!」  クエスは驚愕した、この街の住人が全てロボットだったことに。そして、更に驚くべき事実を、ロキ自身の口から聞くことになる。  「風機っちゅう、ものすごいロボットも創ったことがあるんじゃ!!」  その言葉を聞いたサスケは、ロキを睨みつけていた。 出演 ナレーション、ウェンダ:広井王子 クエス、ティナ:横山智佐 サスケ、ロキ:千葉繁 !#13  ロキの研究室へと招待されたクエスとサスケは、そこで新たなる事実を聞く。このパンドーラが二度と出られない亜空間の刑務所であると。  ロキの話はこうだ。シェスタを制圧した黒い風の将軍リュートはロキの創り出した風機をアショカに売りつけようとした。それを止めようとしてここに投獄されたらしい。初めは幾らか人間がいたのだが、長い時間の間に亡くなり、今はロキ一人。寂しさをまぎらわすために、多くのロボットを創ったという。  亜空間の刑務所。  こんな所へやってきてしまったクエスは、自分の風の技の未熟さにうなだれる。だが、サスケは云う。  「亜空間を飛ぶ風の技は高度な技だ。お前はの風は未熟ではない、使い方を知らないだけだ。偶然にせよそれをお前は使えた。必ずここから抜けられるさ。いいか・・・入ったところからは必ず出られるのさ。」  その言葉に勇気づけられたクエスは、亜空間を飛ぼうと風を全身で感じようとする。光輝く風、シェラのくれた宝石が熱く震える。瞬間、真っ白な風の翼が亜空間を飛ぶ!  「さよなら・・・ロキ。」 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、ロキ:千葉繁 !#14  亜空間を飛び出したクエスとサスケ。クエスは高度な風の技”白い翼”を使ったのだ。だが、クエスは風の手綱を離してしまう。急激に落ちる二人。落ちたそこは、荒れ果てた街であった。  足元の朽ち果てた看板には”ようこそ、緑と湖の街シェスタへ”と書かれていた。しかし、目の前にはそんな光景はない。ただ広陵とした大地に砂塵が舞っていた。  「これは・・・やはりリュートって奴が・・・?」  黒い風の将軍リュート。サスケによればそいつは金髪碧眼で、ドラゴンソードを操る、いけすかない男だという。過去になにかあったらしいが、サスケは言葉を濁すだけであった。  「見ろ。」  サスケが顎をしゃくった方角には、無数の十字架が並んでいた。その十字架を見て、クエスはやりきれない気持ちになる。命を全うした死は愛や慈しみを生むが、戦争で奪われた命は憎しみを生む。クエスはそれが許せなかった。  「くだらない事を考えてるんじゃねえよ・・・。」砂塵のなか、男が現れた。男は、クエスの心を読んでいた。  「俺は風殺しのウィンキル。」  クエスは”風殺し”という言葉の響きに、脳裏がしびれていた。 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、ウィンキル:千葉繁 !#15  「風殺し。それは風喰いの民のことだ。まあ、俺はその最後の生き残りだがな。」 ウィンキルはクエスの心を瞬時にして読みとり語った。  「こいつ・・・僕の考えを読む・・・。」  「読まれないようにするんだな。ま、もうすぐ下手な考えもできない場所に送ってやるがな・・・。」  その言葉にサスケがキレる。  「おまえら風使いが俺達を皆殺しにしたんだろう・・・見ろ!あの墓を・・・あれは、風使いに殺された俺達風喰いの民の墓だ・・・。あの墓の前で死ね・・・!出よ、風喰い虫コルジュム!」  眼前に現れた最強の風喰い虫コルジュム。ウィンキルは、虫使いだ!すばやく風の技を繰り出すサスケ、しかしコルジュムは風の技までをも自らの内に取り込む!奴に、風の技は通用しない・・・!  「僕は、諦めないぞ・・・!」  クエスの中で、なにかが弾けた!!沸き上がる、透き通った白い風。そして、クエスを呼ぶ声。それは、風の精霊であった。風の精霊はクエスと同調し、風に更なる力を与えた。  ”私の本当の名前を見つけられたら、その姿を見ることができる”という言葉を残して・・・。 出演 ナレーション、コルジュム:広井王子 クエス、風の精霊:横山智佐 サスケ、ウィンキル:千葉繁 !#16  風殺し、そして虫使いのウィンキル。風喰い虫コルジュム。風の技は、通用しない。だがしかし、サスケは風の技を連発する。  「喰いたいなら、喰いたいだけ喰うがいい!俺の、技の限界までなぁ!」  次々に発動する竜巻は、頭上からコルジュムを襲う。それらを喰い続けるコルジュム。次の瞬間、コルジュムに異変が。サスケの風の技が、コルジュムの許容量を上回ったのだ。限界を越えたコルジュムはあっけなく倒れた。  「おのれ・・・風使いめ!」  風の技を使い、体力を消耗したサスケに、ウィンキルのナイフが襲いかかる。  「ウィンド・アロー!」  相手の弱点を貫くクエスの風の矢は、間一髪のところでウィンキルの右肩に突き刺さる。  「く・・・なぜ俺の唯一の弱点・・・右肩の古傷がわかったんだ・・・。殺せ!風使いにやられるくらいなら、殺せ!」  それを拒否するクエス。自分にウィンキルを殺す理由が無いと。ウィンキルの体から殺気が消えた。  「相変わらず、敵に甘いな。だが、その優しさがお前の強さかもしれん。」  サスケは云う。そして、改めてシェスタの荒れ様を疑問に思うクエス。サスケはそれが、リュートの仕業であることを断定する。  「リュートか・・・。」  クエスはこの戦争を知りたかった。そのために、リュートに会うことを決意した。 出演 ナレーション、コルジュム:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、ウィンキル:千葉繁 !#17  体力の消耗したサスケを休ませるために、シェスタの工場跡地にやってきたクエス。クエスが街を歩いて得た情報によると、シェスタが今のような状態になったのは三年前、この街にリュートがきてからだという。それからこの街には、工場が乱立したらしい。と、クエスを遮るサスケ。人の気配が・・・。  突然、物陰から不審な人物が現れた。鉄仮面にマントを羽織り、頭に黒いパンツをかぶったそいつは、明らかに変態だった。  「ついに見つけちゃったーー!そこのあなた、あなたどぅえいーーーす!私は、ブラックツンパー教団!!”黒いパンツの可愛い女の子が世界を救うぞ、さあ恥ずかしがらずにパンツで歩こう”推進委員会のポリサ・トールである!!さあ、そこの可愛いあなた!黒いパンツをみせなさーーーい!」  それを聞いていたサスケが、すっと立ち上がった。  「さあ、お遊びは終わりにしよう。」  左手をヒラリと動かすと突風が発生し、ポリサを吹き飛ばした。  「さて、行くか・・・」  「え・・・どこへ・・・?」  「決まってるさ、リュートのところへ・・・」  その言葉に、クエスは唾を飲み込んだ。サスケは、敵の本拠地へ乗り込むつもりでいた。 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、ポリサ・トール:千葉繁 (ここで、CDの一枚目が終わる。ここまで、ラジオ版を聞き返すと、CDで省略されているところ、取り直しされているところなど違いがわかって面白い。ちなみに、ラジオ版で使用されているBGMは宗次郎の”風人-Futo-”から多くとられている。また、この#17で登場したポリサ・トールは、ドラマ内で智佐さんが”その名前、ネタばれてんだぞ”というとおり、モデルはあかほりさとる氏であろう。) !#18  サスケは本気で黒い風の将軍リュートのところへ攻め込むつもりでいた。しかし、サスケの前に黒い風をはらんだ一人の少年が立ちはだかった。  「このまま、帰ってくれませんか・・・?」  少年は静かに声を発した。  「あ、動かないで。あなた達は既に黒い風の呪殺陣の中にいます。僕に手を出すと、黒い風の7人が襲いかかりますよ。」  「うるさい!」  クエスは少年の冷静な青い目に挑発され、攻撃の風を浴びせる。  「無駄です。僕は、リュート様に仕える観察者ガイリーン。今、あなた達は呪殺陣の封印を破りました・・・。」  少年は、そう語ると闇の中に消えた。と、次の瞬間、美しい女性が二人の前にあらわれる。彼女は、全裸に近い。  「私は、呪殺陣一番、舞殺士メイア。」  そう名乗ると、メイアは淫美的な踊りを踊り始めた。その踊りは、サスケを悶え苦しませた。  「サスケ!」  クエスは、風を剣にはらませ、地面にたたきつける。それを切り上げ瞬時に加速させた。  「爆風激震波!!」  クエスの技は、メイアを消滅させたが、力をコントロール出来なかったクエスは、跳ね返った風に巻き込まれてしまう。  「クエス、クエス!!しっかりするんだ。」  「あ、あぁ。サスケ・・・」  「ふふふ・・・。無様だねぇ。私は呪殺陣二番、台風のブローゲン。」  「おいおい、メイアを倒したんだ、油断するな。おっと紹介が遅れた。俺は呪殺陣三番、マガカゼのレッグ。」  メイアに次いで、二人の敵が現れた・・・。クエス達は、呪殺陣の中にいる・・・。 出演 ナレーション、ガイリーン、レッグ:広井王子クエス、メイア:横山智佐 サスケ、ブローゲン:千葉繁 !#19  「レッグ。手出しは無用だよ。こんな風使いぐらい、あたし一人で十分さ。」  「そうか、それでは俺は見物しているとしよう・・・。」  速い!クエスには、ブローゲンが動いたことしか解らなかった。ブローゲンは、サスケの首にナイフを押し当てている。  「くっ・・・。瞬陣の風!!」  サスケが風に乗って消えた!  「そこかッ!」  ブローゲンとサスケは、互いに風を使って戦っていた。風が赤く染まる。  「なに・・、うあぁぁぁ!」  サスケの風はブローゲンを上回り、ブローゲンを吹き飛ばす。だが、それも束の間、新しい敵が現れる。  「これはこれは、光と闇の姉妹、ヒスイとコハクのおでましとは・・・。」  「たかが風使いにな〜にやってんだか。」  「おねぇ様・・・早く殺しちゃいましょうよ・・・。」  ヒスイとコハクが手を合わせると、光と闇の風が同時にクエスを襲う!絶体絶命のクエス。  突然、クエスの影が立ち上がった!  「我は、影使いレイン!影なる風よ、集まりてクエスを守れ!」  クエスは、驚いた。自分の影が、自分を守ってくれたのだ。影使い、レインと名乗って・・・。 出演 ナレーション、レッグ:広井王子 クエス、ヒスイ、コハク:横山智佐 サスケ、ブローゲン:千葉繁 !#20 (ゲームの殿堂・武道館公開録音)  レインが青き風を放つと、それはヒスイとコハクを包み二人を消した。レインもまた、クエスの影に消えた。  「おう、俺はバブル!呪殺陣六番だ!」  新手だ。それを、サスケは挑発する。  「これを受けてみよ!必殺、泡踊りッ!!」  バブルは天空へ向けて高々と腕を突き出した。空から次々に降ってくる巨大な泡。それが、クエス達の頭上ではじけた!  「うあぁっ!くそぅ、ウィンドスピアッ!風よ鋭い槍となれ!」  サスケが風を放つ。それは風の槍となり、バブルに向かって飛んだ。  「ぬぅ!?」  「逃げても無駄だ。それは貴様に当たるまで、追いかけて行くのさ。」  バブルは風の槍に追われ、どこかへと消えた。  「ん!?なんだ、周りの景色が・・・」  突然、周囲が歪み消えてゆく。  「わたしは、呪殺陣の七番。結界神殿のラムダ。ようこそ、我が神殿へ・・・。」  冷静かつ荘厳な声が響く。  「やぁ。君達も、ここに飲み込まれたのか・・・。」  クエス達の目の前には淡いブルーの髪をした少年が立っていた。  「ぼくはベロ、風使いの見習いさ。」  「どこの風使いだ?」  「西の谷だ。」 「それじゃ、カザミのところか・・・。」  「カザミもここにいるよ。」  「なに!?」  サスケはベロに連れられ、宮殿の広間のような場所へたどりついた。  「サスケ・・・?本当にサスケなの!?」  「おめぇ、目を、やられたのか・・・?」  「ああ、あの、風機って化け物にねッ!!」  「リュートは、本当に俺達と同じ風使いなのか?」  「そのことは、俺が話そう・・・」  「バリ!?お前、バリじゃねぇか!」  「あいつは、黒い風に取り付かれた男だ。かなり出来る奴だった。だが、黒い風を使いすぎた。」  「ここから抜け出す方法は?」  「わからねぇ・・・」  「そうか、やはりあれを使うしかないか・・・」  「やめなよ!サスケ」  「心配するな。俺は、黒い風に取り付かれたりぁしねえよ・・・」  「サスケ・・・」  「今ここに、サスケの名をもって黒き風に命ずる・・・吹け・・・瞑界の風・・・ダークストーム!!」  それは、我らにとって禁じ手だ。突如、空間に黒い穴が空いた!  暴走するサスケの力、それをカザミらが抑える。  「さぁ、早く!こっちにこい!」  だが、カザミ達は首を振るだけだった。いま、彼女らが動けば風が消えてしまう・・・。  次の瞬間、景色が通常に戻った・・・。  「終わった・・・。結界神殿は消えた。」  「なにを・・・サスケ!カザミもバリもベロも!みんな消し飛んでしまったんだぞ!何故だ、何故!」  「戦争だからだ!」  「じゃぁいつ!いつ戦争は終わるんだ!人間が、みんないなくなったときか?!」  サスケは答を持っていなかった。しかしこれだけは云える。  希望を捨ててはいけないのだと。 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ:千葉繁 バブル、ラムダ、ベロ、カザミ、バリ、風喰い虫:会場から選ばれた皆さん (この回は、95年8月28日に行われた「ゲームの殿堂」内での、広井王子のマルチ天国の公開録音によっておこなわれた。様々な都合上、CDではカットされている。最後のほうの台詞は取り直してでも入れて欲しかったと思うが・・・) !#21  「おっと、まだこの呪殺陣の三番、マガカゼのレッグが残っているのを忘れているようだな。貴様らはここで死ぬ!」 すばやく技を繰り出すレッグ。  「うぐぅ・・・」  クエスは防御する暇がなかった。と、影が青く光る。  「グローリアスシャドウ!」  「現れたな、レイン!させるか!影縛りッ!」  レッグの技は、レインを捕らえた。  「風よ、我が元に集まれ!」  サスケが唱えると、上空に風が集まる。そは、風の三日月となり、三方向からレッグを襲う!  「な、なにぃ!?うぐぁあ・・・!んん、ならば・・・・デッドリィ、ブーメラン!!うぐぉぁああああああ・・・・・・」  レッグは死に際に風を唱えた。  「くぅ!」  「サスケ!?」  「奴め・・・自分の・・・・ダメージをそっくり・・俺にもよこしやがった・・・・あぁ・・・嫌だぜ・・・・死ぬのはよぉ」  「サスケェェェェ!!」  クエスは、抱きかかえるサスケの体が、急速に冷たくなってゆくのを感じた。 出演 ナレーション、レッグ:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、レイン:千葉繁 !#22  サスケは、限りなく死に近づいていた・・・。 −−−俺は、空から俺とそれを抱えるクエスを見ていた。それは不思議な光景だった。 −−−時間は緩やかに流れ、光が遠くに輝いている。 −−−輝く風が心地よく俺の体を吹き抜ける。 −−−戦いの記憶も、もう手の届かない遠方にあるように忘れかけ、それは俺の魂を浄化しているようだった。 −−−俺は、光の門の前に来た。死んだ仲間や、俺の殺した相手が、光へと昇ってゆくようであった。 −−−クエスの思い出も、徐々に薄れてきた。いやだ!俺は忘れるものか。あいつが、あいつが一人前の風使いになるまで、俺は、あいつのそばにいるのだ! −−−いやだ!俺はクエスのところへ帰るんだ! −−−(俺は、アンサーのところへ帰るんだ!) −−−突然、別の意識が俺の心に割り込んできた。アンサー?風使い? −−−帰る・・・クエスのところへ?アンサー?クエス!!  「はっ・・・!動いた・・・!?サスケ!」  「う、うう・・・!」  サスケの体が見る見る、犬の姿になってゆく。  「これは、どうしたんだ?サスケ!?」  「まったくうるさいガキだな!俺の名前はポチ!サスケなんかじゃねぇよ!」 「あ、あああ・・・なんてことだ・・・。」  「うーん、これは考えるに、転生だ。俺は死に損なったらしいな。ところで、今はいつだ?」  「火星歴988年、ここは西の町シェスタ。」  「火星?4212年前に移動したのか?うん?お前は風使いか?とすると・・・なるほど俺が転生したのは、やっぱりそうか!俺は運命の犬だ!」  「どうでもいいけど・・・サスケはポチという犬になってしまった・・・」 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山地佐 サスケ、ポチ:千葉繁 (ちなみに、ラジオ版でサスケのモノローグのシーンで流れていたのは、宗次郎「風人」5曲目・風が谷間を降りて来る、という曲。とても美しい曲なので、ぜひ一度聴かれることをすすめる。) !#23  ポチは、自分が火星の運命を見きわめる為に、神が自分を転生させたという。  火星の運命。それは、何故人間が幸せを願いながら戦うのか、そしてその答が風使いの存在にあるかもしれないということ。  「難しい・・・」  「だから考えるのさ!人間は考えるのどちんこ・・・じゃなかった、葦であるというしな。」  「じゃ、なんで戦争が・・・」  「さ、腹が減ったな。考えすぎは体に悪いしな。」  「きみの性格が、だんだん解ってきたよ・・・。まぁ、街の中にいこうか。」  リュートの城。そこで風を詠む男フィーグ。だが、彼は風琴の弦を切ってしまう。  「む・・・風琴の弦が切れるとは・・・」  「ははは、フィーグ様が風琴の弦を切るとはお笑いだ!」  そこに現れる少年ヴァンダリック。フィーグは、ヴァンダリックにリュートが呼んでいることを告げる。広間へ向かうヴァンダリック。広間には、珍しく人が集まっている。  「ヴァンダリック・・・どうしてあなたは時間を守らないのです。そういう利用価値の無い者は、私がここで殺して差し上げましょう。」  「やめぃ!ロンファ。ヴァンダリックにはあの風使いを殺しにやる。アルランジュには風機で風の谷を攻撃してもらおう。」  「はい・・・。」  「それじゃ、リュート様、あのクエスって娘を殺しにいってきます!」  リュートはその様子を一通りながめてから、ロンファに新型の風機−雷機−の開発状況を訪ねる。ロンファは、ことごとくそれが遅れている事を告げる。  雷機開発室。第三王子リオは自分の開発する雷機で、多くの命が奪われる事を危惧して、その開発はうまく進まなかった。リオに仕えるサイトは、そのことをぴたり見抜いている。  「可愛そうなリオ様・・・さあ、私の右目をご覧なさい。気持ちが安らぐでしょう。ゆっくりおやすみなさい・・・そして、悪い事は、忘れなさい・・・。」 出演 ナレーション、ロンファ、サイト:広井王子 クエス、ヴァンダリック、アルランジュ:横山智佐 ポチ、フィーグ、リュート、リオ:千葉繁 (この回は記念すべき話である。というのも、ドラマの中で初めて自分のハガキが採用されたからだ。しかも、ほぼノーカットでCDに収録されている。ありがとう!広井さん!) !#24  「なんだぁ道に迷ったのか?でも何で町中にこんな森があるんだ??」  クエス達は、いつのまにか森の中にいた。樹という樹から、白く美しい粉が出ていた。  その目の前に、淡い光をまとい、精霊が現れた。それは、リディアと名乗り、クエスの持つ赤い石は「しるべ石」であることを告げた。  「それを、この導きの杖にはめておつかいなさい。あなたがたの進むべき道を、指し示してくれるでしょう。」  「おねぇさま。今日は珍しく人間に優しいのね・・・」  「ウィンディア!」  「アショカと戦ってるって聞いたから、助けてあげようかなって。」  ウィンディアは青い石を取り出すと、クエスに手渡した。それは、赤い石の双子石だという。  「じゃあね、アショカなんかに負けちゃだめよ・・・」  精霊はそう語ると、光の中に消えた。  「ちぇ、精霊とかってのはそっけないなぁ。云いたい事だけ云ってハイさようなら、だもんなぁ。」  「じゃ、僕が相手をしてあげよう。僕はヴァンダリック!風を殺しにきたのさ!」  敵だ!ついにリュートが動いた! 「よーし・・・あ、西田ひかるちゃんがコロッケ食ってる!」  「え!?どこどこ?」  「隙ありッ!」  ポチはその一瞬に風を唱え、ヴァンダリックを吹き飛ばした。・・・かなり汚いやり方だ。  風の城。それは伝説の城。風使いはそこに集まり、自らの風を磨いたと云う。  赤い石を填めた導きの杖は、一筋の光を発し、風の城への道を指し示した。  再びリュートの城。リュートの未来を占おうと、ロンファが水鏡をのぞき込んでいる。それにまとわりつく、魔族ルーラ。それを軽くあしらうロンファ。  「さて、ラピス。リュート様の未来を先見せよ。見た通りのことを話せ。」  「はい。・・・火が、見えますそして、荒々しい風が、吹いております。それ以外は何も。」  「そうか、さがれ。・・・ラピスの先見をもっても、何も見えぬか・・・」  「おい、ロンファ!そんな事して、なに考えてんだ!?」  間髪いれずに飛び込んでくるバーニン。暗黒教典をひもとくことが出来るのがリュートだけである為、リュートに仕えながら機会を狙っているのだ。だが彼は、いつまでもアショカのオモリをしていることにシビレを切らしていた。  城の中、とある部屋で。  「アウステル・・・どこなの・・・?」  「どうしました?エオルス様。」  「ああ、ロンファ・・・あの、アウステルがいないの・・・」  「アウステル・・・ああ、猫のことですか、お探ししてお連れしますので・・・」  「ねぇ、ロンファ・・・最近、強い風を感じます。お兄様より、強い風なの・・・」  「リュート様より強い風などありませんよ。」  「・・そうよね、お兄様の風が、この火星を美しくするのよね・・・」  「はい・・・、必ず。」 出演 ナレーション、リディア、ロンファ、アウステル(?):広井王子 クエス、ウィンディア、ヴァンダリック、ルーラ、エオルス:横山智佐 ポチ、ラピス、バーニン:千葉繁 !#25  導きの杖は、クエス達を風の城へともたらした。 「あぁ!風の巫だ!」 「うわぁ・・・きれいな人だ・・・・」  目の前には紗の衣服まとった美しい女性がいた。 「あなた方は風使い・・・あなた方に力を与えましょう。それは、唯一黒き風に打ち勝つ事が出来る力。黒き風使いは、風をねじ曲げて使っています。彼らの目的が知りたくば、風の翁にお聞きなさい。」  クエスは、巫から「忘れられた剣」を受け取ると、風の翁が住むという西へと向かった。 出演 ナレーション:広井王子 クエス、風の巫:横山智佐 ポチ:千葉繁 !#26  西の谷にたどり着く二人。そこにはゆうに2600才にもなる風の翁がいた。少々キているじいさんで、半ば強引に黒い風の目的を問いつめる二人。 「黒い風・・・目的・・・・?では、この時の砂時計に聞こう。」 「ああ、見える・・・。」  アショカの民は放浪の民であった。彼らは定住すべき場所を見つけ、町を造り、急速に発展した。その町を風使いが守っている。ティオ。彼は勇敢な風使いであり、アショカを守る中心人物であった。しかし、十分に国が大きくなると風使いが不要になり、アショカはティオを捕らえる。 「ひどいよ!」  と叫ぶと、風の時間が終わった。 「く、黒き風の目的は!?」 「黒き風の目的が知りたければ・・・そこのおなごのパンツを見せてもらおうか・・・。ふぇっふぇっふぇ。」 「なんで、ぼくが・・・。」  クエスは、自分の人生を誰かにもて遊ばれているような気がしていた・・・。 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 ポチ、風の翁:千葉繁 !#27 「修行・・・その1031・・修行・・・その1032・・!」  クエス達は、風の翁のもとでリュートを倒すための修行を続けていた。ポチはすでに新しい技を編みだしたようであったが、クエスはなんの効果も得られていなかった。 −−−クエス。お前には風使いとしての才能がある。心を開け。風を受け入れろ。なにかを学ぶのではない、ただ、風を感じるんだ。−−− 「!!」  クエスは、風の中にサスケを感じていた。その言葉を信じ、風の中に立ち心を開くクエス。 「おお、これは高度なテクニックを会得したものだ。それは風の対話ともうしてな、風の言葉を聞き風の技を受け継ぐのじゃ。」  その直後! 「ぐうぅ・・・苦しい・・・。最後の戦いには・・・俺じゃ駄目だって解っていたさ・・。俺の修行は・・・あれだけじゃない。これが、俺の修行の成果だ・・・!風の奥義・・・呼び戻しィ!!うがぁぁぁぁぁ!!」  ポチの体が七色に輝く!その光の中で、ポチは見る見る変化してゆく。 「うがぁぁ・・・・。はぁ・・・・・はぁ・・・・。ただいま・・・地獄の果てよりサスケが戻ってきたぜ・・・。」  なんて事だ。クエスは驚きのあまり、息が止まりそうであった。 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 ポチ、サスケ、風の翁:千葉繁 !#28 「風使いが二人。私に戦いを挑んでくる。」 「私がでましょう。災いは小さなうちに摘みとるものです。ここは私めに。」  クエスの目の前に、リュートの城がある。迷いはない。頭の中は冷静だった。と、城から現れるロンファ。 「ここから一歩も中にいれる訳にはゆきません。邪なる風よ、我が名をもって命ずる。この二人をうちのめしなさい・・・。カオスミスト!」  一瞬のうちに漆黒の闇に飲み込まれる二人。その中で邪悪な風を感じるクエス。クエスは風に問うた。何故たけり狂うのか。何故人を傷つけるのか。 「黒き風よ、そんなに悲しんではいけない。そんなに人を傷つけてはいけない。僕は、どんな風も受け入れるよ。だから、荒ぶらないで・・・。気持ちをね、落ちつけるんだ。」  突如として闇が消えた。 「なに!?」 「お前達は、風の憎しみや悲しみを増幅させて使う、邪悪な技だ。風達はもっとやさしく、僕たち風使いは風とともに生きる者だ!」 「うるさい・・・。風の望むようにして何が悪い。風は、我らが道具である。」 「違う!風は、生き物だ!言葉や、表情をもつものだ!」 「うるさい!デビルタイフーン!」  クエスは、心の中で純白に輝く白き風を感じていた。 出演 ナレーション、ロンファ:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、リュート:千葉繁 !#29 「シャイニング・ガスト!輝きの風よ、黒き風を打ち消せ!」 「更に風に命ずる。我らの盾となり、黒き風を止めよ!バウンズ・ウィンダム!」  クエスとサスケの合体技は、ことごとくロンファの風を粉砕した。 「どけ!僕たちの本当の相手はリュートだ!」 「このロンファにどけだと!?荒れ狂え!黒き風よ!我が命に変えても、この者達を抹殺せよ!」  ロンファの周囲を黒き炎がとりまく。そこから生まれる風。恨みの風・・・。それがクエスを襲う!瞬間、サスケが動く! 「クエスには指一本触れさせねぇ!風切丸!」  サスケの剣に白く輝く風がはらむ。激突する白と黒の風。 「ぬおぅ・・・、くぅあああああああ!」  白き風が、ロンファを打ち消した。残すは、リュート。白き風よ、僕たちを守ってくれ・・・。 出演 ナレーション、ロンファ:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ:千葉繁 #30(最終話)  クエス達は、リュートの城へと乗り込んだ。  クエスは、本当の力とは全てを制圧するでもなく、弱き人々の為に使うものだと考えていた。だから、黒き風は、許せなかった。  目の前に、リュートがいる。  リュートの体が、まるで宇宙の果てのように暗く輝いた。 「貴様達はここに消滅する。そして、ここに黒き風の伝説が生まれるのだ。」  リュートの声が耳に届く。声の重さ、力、存在感。それがクエスにめまいを生じさせた。かろうじて、サスケの声がクエスを立ち直らせる。 「この、黒き風の宇宙から抜け出せはしまい。所詮、白き風も我らが一部。」  それを聞き、びくっとするクエス。黒き風はますます強くなり、クエスを誘う。力こそ全てだと。 「リュートォォ!」 「邪魔をするな!」  刀を抜き、リュートへ突進するサスケを、リュートはちらと視線を向けただけで、天井にたたきつける! 「まだわからぬか。黒き風が死に絶えるとき、風の道を通過し風溜まりに集まる。命の尽きた風。それが白き風なのだ。黒き風が、風を生むのだ!風は邪悪な命をもつものである。だから、我ら黒き風使いは、人のために生きる者ではない!我は絶対の指導者である。」 「うそだ!そんなこと・・・!消えろ!黒き風など・・・消えろッ!」  白き風の粒子がクエスをとりまく、暖かい・・・。まるで、母さんの暖かさ。まるで、恋人の優しさ。風は答える。あなたに寄り添っていると・・・。風は心を映し出すものだと・・・。  クエスの白き風が、黒き風を包み込む。クエスは、リュートの怒りや悲しみを全て受け入れた。力の支配なんてちっぽけなもの。全てを支配し、自由にできても、人の心は頑なに閉じてしまう。それは不幸なことだ。人は・・・そう、優しくなければ!優しい風を使わなくては!そう感じている。  黒き風は、震えていた。白き風は、力を使わずに黒き風と戦っている。 「そんなに僕が憎いのか・・・?ならば、僕を消しされ・・・!でも、僕の思いは、意志は永遠に生き続ける!人の心は誰にもあやつれはしない。それを知らない黒き風は愚かだ!さあ、リュート。僕を消すがいい!」  ふたつの風は混ざりあい、絡み合い、消えかかっていた。 「クエス・・・!?」  その名を呼ぶサスケをクエスは振り返る。そして微笑んでいた。 「サスケ、僕は消えてしまうけど、僕の意志は残るはずだよ。サスケ、僕は風使いだ。サスケ、すてきな旅をありがとう。サスケ・・・。大好きだったよ・・・!」 「サスケ・・・・・・・・。」 出演 ナレーション:広井王子 クエス:横山智佐 サスケ、リュート:千葉繁